公益財団法人租税資料館


トップページ>>租税資料館賞>>第24回入賞作品>>「ハイブリッド金融商品を用いた税源浸食への対応に関する一考察」
戻る 次へ

見島 絵里香 稿
「ハイブリッド金融商品を用いた税源浸食への対応に関する一考察」

(立命館大学大学院 院生)

 本稿は、ハイブリッド金融商品の利用により生じる国際的二重非課税の解消方法について、2012年及び2014年のOECD報告書の議論を検討した上で、様々な性格を有する金融商品を法的性質によって区分するのでなく、相手国の税制上の取扱いによって課税を行うか否かを決定する方法を我が国の現行法にも導入すべきであるとの主張を骨子にして、我が国の現行法の改正の必要性について具体的な提言を行うことを目的としている。

 本稿は、第1章ハイブリッド金融商品の取扱いの問題点、第2章二重非課税に対する各国の対処方法、第3章国内法への示唆の3章より構成されている。

 第1章は我が国の国際的二重非課税問題点を指摘し、第2章でEU及びOECDにおけるハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントに対する対処方法を丹念に整理している。そして、第3章において、この問題に対するOECDの議論を参考に、我が国のこの問題に対する対応方法を提言している。

 結論において、「ハイブリッド金融商品の税制上の取扱いとしては、金融商品の法的性質に基づいた区分に頼るのではなく、一定の国内法を整理した上でハイブリッド・ミスマッチ・ルールの様に相手国の税制上の取扱いによって課税を行うか否かを決定する方法を我が国の国内法にも導入することが望ましいと考える。この方法によれば、ハイブリッド金融商品から生ずる国際的二重非課税の解消に繋がるだけでなく、ひいては将来において発展が見込まれるハイブリッド金融商品市場の公正な発展やグローバルに活躍する企業の資金調達・運用にも寄与すると思われるため、今後税制改正が予定されている外国子会社配当益金不算入制度だけでなく、他の現行税制への更なる検討が望まれる。」と述べて、国際的二重非課税問題の解決のための法改正の必要性を論じている。

 本稿は、問題意識が明確であり、先行研究を議論の出発点にして、国際的な議論を要領よく整理している。ハイブリッド金融商品の国際的二重非課税問題に絞り問題解消のための立法的提言も興味深い。

 また、論文中に簡単な事例を設定して図解するなど、丁寧な論証を加えている点も筆者が問題点を正確に理解していることの証左であり、研究姿勢が真摯であることをうかがわせる。

 一方、第3章の国内法への示唆の内容では、適切な制度の提案の内容については論理の飛躍があるように思われる点が気になる点ではある。

 しかし、著者の問題意識はクリアであり、タイムリーな問題について果敢に挑戦した本稿の内容は租税資料館賞に値する研究成果として評価できる。


論 文(PDF)・・・・・・767KB


戻る 次へ




Copyright (c) SOZEISHIRYOKAN. All Rights Reserved.