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若林 俊之 稿
「借地権課税の問題点
 ―「相当の地代」と「使用貸借」に係る私法と租税法の
                         乖離についての考察―」

(日本大学大学院 院生)

 本論文は、いわゆる借地権について、個人については、相当の地代の支払いがある場合や無償返還届の提出がある場合には借地権を認識しない取扱いであるのに、法人については、無償返還届での提出がない場合に借地権を認識する取扱いがなされており、一貫していないことから生ずる実務上の問題点を整理し、あるべき借地権課税の仕組みを構築しようとするものである。そして、結論として、賃貸借契約、使用貸借契約のそれぞれについて、私法上の借地権の権利の帰属に即して課税取扱いを決すべきであって、私法からの乖離を生じさせる「相当の地代支払い」や「無償返還届の有無」といった形式基準を採用するのは止めるべきであると提案している。さらに、権利金の収受がない場合の認定課税については、相当の地代の支払いに関しては、長期割賦販売等の取扱いに類似した課税繰延を導入すべきであるとし、また使用貸借については、権利金ではなく土地の利用期間中継続して発生する経済的利益への随時の課税をすべきであると提案している。

 本論文に一貫した視点は、私法上の法律関係に即した借地権課税の取扱いである。この視点自体は法秩序の一体性の観点からは理論的に適切であると解される。しかしながら、私法上の実体解明は、租税実務上、困難が伴うことから、課税取扱いとしては現行の形式基準が考案されているのである。裁判によって、訴訟当事者から提出された証拠に基づいて事実認定や法的実質が判断されるのであればともかく、課税実務において、この形式基準を廃止する以上は、それに代わる、私法上の実体判断を決定するための何らかの基準が明らかにされるべきであるが、本論文においては、その提案はない。それゆえ、理論的にはありうる立論であるとしても、説得力や実際の執行力については弱いという問題がある。また、自己の提案を裏付ける資料として、税理士を対象としたアンケート調査を行い、その結果を論証に用いているが、このアンケートがいつどのようにおこなわれたのか、対象税理士をどのように選定したのか等が明らかにされていないため、実証性を弱めている。今後、継続的な考察が行われることを期待している。


論 文(PDF)・・・・・・632KB


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