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佐古 麻理 著
『米国における富の移転課税
 ―連邦遺産税・贈与税・世代跳躍移転税の法理―』

(同志社大学研究開発推進機構・法学部助手、税理士)
平成28年3月 (株)清文社

 本書は、米国における連邦遺産税・贈与税及び世代跳躍移転税について、それぞれの税目の沿革、概要、課税根拠と問題点を総合的に論じ、それらの法理を明らかにしようとするものである。そして、それらの検討を踏まえて、我が国の税制への若干の提言を行うものである。それらの論述の構成は次のようになっている。

 第1章 富の移転課税の歴史的展開
 第2章 連邦遺産税
 第3章 連邦贈与税
 第4章 世代跳躍移転税
 第5章 課税根拠論
 終 章 (日本法への若干の示唆等)

 このような米国の連邦遺産税等の研究については、類書は多いが、本書では、本書の「推薦の言葉」にもあるように、米国の財産移転課税制度を歴史的かつ包括的(総合的)に検討・紹介するものであり、平板な制度紹介ではなく、自由・平等の価値実現と税制との関連を意識し、課税理念の確立の重要性を指摘している点に特色がある。

 また、著者は、現行税制の問題点と課題を踏まえて、富の移転課税と家族の価値観との関係、遺産税や生涯累積取得課税、包括的相続税の取扱いを検討し、税制度改革への提言につなげている。これらの論述は、論旨は明確であり、多くの文献・資料の検証に基づき論拠づけられているので、その点では評価できる。

 そして、それらの論述を踏まえて、我が国の相続税・贈与税制度について、米国制度にならった生涯累積課税制度への移行、相続税と贈与税の統合等が必要である旨の提言を行っている。

 以上の論述においては、確かに、米国の遺産税制度については、多くの文献・資料に基づいて、幅広く検討しており、類書の中では勝れたものと評価できる。その点では入賞作品として評価できる。

 しかしながら、米国の課税制度をもって我が国の相続税・贈与税制度への示唆・提言については、多くの比較法学者が陥るように、研究した国の制度を是とし、それと異なる我が国の制度を是正すべきとする論調であり、首肯し難いところがある。そもそも、我が国の相続税・贈与税制度については、米国のシャウプ博士の提案によって制度化され、それが根付くことがなかったという歴史的事実があり、そのことについて説得的な分析・検討もせず、米国制度を是とする考え方は安直である。

 ともあれ、それらの難点があるとしても、総合的にみて、本書を入選作品として評価できる。


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