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角田 享介 稿
「自己創設営業権の時価評価について」

(豊橋創造大学経営学部教授)
平成27年7月 税務大学校『税務大学校論叢』 第80号掲載

 本論文は、完全子会社が連結納税制度に参加する際に時価評価を求められる資産の中に、自己創設営業権が含まれるかどうかについて、それを肯定する論拠を整理して列挙するとともに、租税回避を防止する等の観点から、子会社が保有する繰越欠損金に相当する額や他の制度会計で無形資産とされるものを、税務会計上営業権として計上することの不当性を検証したものである。

 具体的な論文展開について、筆者はまず、第1章において制度会計における営業権とのれんの概念の区分を立法の沿革に沿って検証したうえで、第2章において、税務会計上の営業権該当性が争われた13の裁判例を通じて裁判官が解釈上明らかにした税務上の営業権概念を検証し、それは会計における新たなのれん概念が登場した後も変わらないことをまず確認している。次に、自己創設営業権の時価評価を可能にするM&Aに伴う内外の会計技術の進展を、無形資産にかかる会計基準の発展状況を背景として検証しつつ、税務会計における営業権概念は制度会計のそれと比較してより広くなる分野とより狭くなる分野があることを確認している。最後に、連結納税への参加にあたって求められる時価評価資産に自己創設営業権が含まれるかどうかについての賛否両論を紹介し、税法解釈上はそれを除外する旨が明記されていないこと等から行政実務としては含まれるべきとする解釈を取っていることを強調している。なお、そのような解釈を取る際には、時価評価に伴う租税回避等の懸念等に答えるための実務上の諸課題があることを提示し、その場合の留意事項をまとめている。

 筆者は、論文の前半部分で営業権とのれんの関係について、金商法会計における取扱いと会社法会計における取扱いを丹念に検証し、新たに差額概念として定義されたのれんとその結果のれんを控除した残余として把握される営業権の関係を明らかにしている。これに対して税務会計で営業権とされるものは、もっぱら判例でその輪郭が明らかにされてきたので、多くの判例分析を行い従来の閾値を明らかにしている。

 税法の文理解釈から、自己創設営業権も時価評価資産になるとの当局の解釈は公認会計士協会のサポートを得て定着しているようであるが、会計やビジネスの実務家の間には依然として会計処理の基準に鑑みて、時価評価資産に該当しないとする見解も主張されており、解釈論の範囲かどうかについて決着がついてはいない。筆者はこの点に関し賛否両論を公平に紹介しており、租税回避防止の観点からの営業権内容の精査を行うという課税当局の立場は判例により解釈論でサポートされていることを詳細な判例分析により個別に論証した点で、租税資料館賞にふさわしい専門家論文と評価されよう。ただし、租税回避対応の諸課題については個々の判例分析によるべきとの指摘にとどまり、前半部分の検証を生かした具体的な解釈指針の提示にまで至っていない点は物足りなさを感じる。


論叢本文(税務大学校のホームページへリンク)(PDF)・・・・・・2.18MB


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