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佐田 雅俊 稿
「所得税法における債務免除益課税に関する考察
 ―「資力喪失状態」に着目して―」

(新潟大学大学院 院生)

 本論文は、旧所得税基本通達36−17に定める「資力を喪失し債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合(資力喪失状態)」の解釈に関する判例及び学説を取り上げて分析するとともに、旧通達の規定と所得税法44条の2の規定を比較することにより同法の「資力を喪失し債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合(資力喪失状態)」の意義を解明することを目的とする。

 論文の構成は次のとおりである。すなわち、第1章では、所得税における債務免除益の取扱いに関する旧通達36−17と所得税法44条の2の規定の構造を紹介するとともに、法人税法59条の規定との比較を行い、所得税法44条の2に定める「資力喪失状態」の方が不明確であるとする。第2章では、旧通達36−17の効力下において、債務免除益の課税に関する学説の分析を行っている。第3章では、仙台高判平成17年10月26日、国税不服審判所裁決昭和49年12月7日、名古屋高判平成4年1月30日を取り上げて「資力喪失状態」の意義を分析する。第4章では、旧通達廃止のきっかけとなった大阪地判平成24年2月26日で判示された「資力喪失状態」認定に係る6つの基準を取り上げる。第5章では、新しく創設された所得税法44条の2における「資力喪失状態」の解釈を展開し、一世帯あたりの年間消費支出額をすべて返済に回したとしても債務のすべてを返済することが困難であると認められる場合には債務免除が受けられると結論づけている。

 本論文は、先行研究が極めて少なく、平成26年度税制改正で導入された制度を含む個人の債務免除益課税について包括的に分析した研究であり、まず、時宜に適ったテーマ設定は大いに評価することができる。また、債務免除益に関する旧来の学説及び判例を丹念に分析した上で、所得税法44条の2の解釈について自身の明確な見解を述べており、研究論文としても大いに評価することができる。筆者は、法人税法における企業再生税制との関係、従来の通達、学説、判例、所得税法新規定を総合的に検討した上で、法人税法と比べて所得税法の規定が明確ではないことを指摘し、「資力喪失状態」の判断基準を明快に導き出す。本研究の成果は、災害の被災地におけるいくつかの二重債務に対する救済スキームなどについて、所得税法の「資力喪失状態」の該当性を判断する上で、一定の意義を持つといえよう。

 ただし、若干の引用等のミスがみられるほか、筆者の私見が所得税法44条の2の解釈として適切であるかどうかは、なお十分に論証されているとは言い難い。これらの点については、今後のさらなる改善を期待する。


論 文(PDF)・・・・・・923KB



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