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萩生田 宗司 稿
「家族信託を巡る課税関係について
 ―受益者連続型信託を中心として―」

(國學院大學大学院 院生)

 本稿は、平成18年12月8日に成立した改正信託法(以下「新信託法」という)のうち、新信託法第89条(受益者指定権等の定めのある信託)、同法第90条第1項(遺言代用信託)、同法第91条(後継ぎ遺贈型受益者連続型信託)に対応して、改正された平成19年改正信託税制の課税関係を検討することを目的としている。

 これらの信託は「家族信託」の一類型と考えられ、残された配偶者および障害者の子の生活保障等において、委託者の意思に沿った財産承継の手段の一つとして活用が期待されているが、信託税制自体が租税回避行為の防止に重きを置いている結果、租税負担のリスクが障壁となり、家族信託の利用は活発とはいえない状況をもたらしているのではないかという問題を、筆者は本稿の問題意識の中心に据えている。

 本稿は、以下の4章により構成されている。
 第1章 家族信託の概要
 第2章 信託税制の変遷
 第3章 現行信託税制の検討
 第4章 受益者連続型信託の課税問題とその提言

 筆者は、第3章の検討により、現行信託税制が一貫して租税回避行為の防止に重きを置いていることを確認している。

 筆者は、私人間における信託契約を含む法律関係に対する課税については、その実態を踏まえて課税すべきであり、私法上の法律構成に基づき課税関係を構築すべきであると基本的な考え方を明確にしている。とりわけ、新信託法第91条が規定する後継ぎ遺贈型受益者連続型信託を相続税法第9条の3の適用対象から除外して、後継ぎ遺贈(そのうち、後継ぎ遺贈の停止条件付遺贈の解釈)の法律関係に準拠して課税関係を構築すべきであるとの筆者の提言は評価すべきであろう。

 さらに、次のような具体的課税のタイミングについて興味深い提言を行っている。すなわち、「まず信託設定時には、第一次受益者は受益権を委託者から遺贈により取得したものとして相続税を課税し、第一次受益者が有する受益権が分割されている場合でも、第一次受益者に対し信託財産全体を課税する。一方、第二次受益者は信託設定時には受益者としての権利を現に有していないことから、この時点で課税関係は生じない。そして、第二次受益者は第一次受益者の死亡時に、委託者から直接信託財産を遺贈により取得したものとして信託財産全体に課税する。また、第一次受益者が現実に受益しなかった部分の納付済みの相続税については、第一次受益者の死亡時に更正の請求を認めて還付を可能にさせるという方式である」として、信託の設定時、信託の第一次受益者および第二次受益者の課税関係についても、課税のタイミングの視点から興味深い提言を行っている。

 家族信託の利用が進展しない理由として、信託税制が租税回避防止に重きを置いている点を挙げているが、この問題意識とその問題解決に向けた積極的提言は評価できるものであり、租税資料館賞に値するものと高く評価できる。

 一方で、本稿には、私法上の法律構成に基づいて課税関係を構築すべきであり、これらの提言は合理的なものであるが、これらの提言の実行が立法措置によるべきか、運用により可能であるのかについて明確にすべき課題は残るが、本稿が労作であるとの評価は不変である。


論 文(PDF)・・・・・・1.63MB



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