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福田 智子 稿
「受益者課税制度における所得区分
 ―事業体課税における所得属性転換機能からの示唆―」

(中央大学大学院 院生)

 本論文は、受益者課税制度を原則とする信託税制について、所得税法13条1項の擬制規定(受益者が信託財産に属する資産および負債を有するものとみなすとする規定)による導管理論が、所得の帰属のみならず所得区分にまで及ぶのか否かという点を問題意識に、信託のみならず、民法上の任意組合、匿名組合等の事業体のそれぞれにケースについて、判例、学説等を取り上げ、網羅的な検討を行った研究である。付言すれば、受益者課税制度における所得区分の判断基準を検討することを目的とした研究であるといえる。

 第1章では、信託法における信託の法的性質について、@財産権の移動、A信託財産の独自性、B信託財産の質的転換の3つの視点から考察し、信託を利用することにより受託者が収受する所得と受益者が収受する所得の性質が転換することを確認している。それを踏まえた第2章では、所得区分の沿革と概要について、とくに明治20年日本に初めて所得税が導入された後、昭和15年に現行所得区分の基礎となる制度が導入された経緯、課税公平原則からの要請である所得区分制度が設定された意義について検討している。つづく第3章では、学説や過去の判例などを基に民法上の組合と匿名組合における所得区分の判断メルクマールについて、それらの事業体が有する法的性質の差異に着目した考察を行っている。最後の第4章では、信託本質論に言及しつつ日本の信託所得課税において採用されている受益者課税原則の内容及びその理由、さらに大正11年における信託税制創設から平成19年税制改正までの経緯及びその内容を明らかにし、信託の独自機能である財産権転換機能について最近の判例を参考に今後解決すべき税制上の問題を指摘している。

 本論文は、結論として信託等に所得の属性を転換する機能があることと、担税力に応じた課税という所得区分本来の趣旨にかんがみれば、道管理論が所得区分の判断にまで及ぶと解するべきではなく、納税義務者(信託であれば受益者)を判断主体として、納税義務者が得た所得の性質が所得税法23条以下の各種所得の要件を充足するかにより判断すべきであるとしている。また、民法の学説上の対立にまで踏み込んだ検討を行う等かなり広範囲な議論を行うとともに、既存の判例や学説を網羅的にかつ丁寧に分析している。そのように、本論文は、論旨が一貫し極めて説得力のある論攷となっており、完成度の高い研究である。さらに、論文の展開に即して、ページ毎に綿密で十分なほどの脚注が付され、議論の内容を捕捉している点は本論文の価値を大いに高めており、本研究の意義を高く評価できるところである。


論 文(PDF)・・・・・・2.15MB


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