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吉田真也 稿
「公正処理基準の帰納的分析―裁判例の検証を中心として―」

(弁護士、早稲田大学大学院 院生)

 本論文は、日本の企業会計基準が経済的実質主義を基礎とする資産負債アプローチに基づいて設定されるようになり、企業会計上の利益の担税力(支払能力)が相対的に低下しているという観点から、企業会計と法人税法(税務会計)の乖離が進み、納税者の予測可能性が困難となりつつある状況の中で、公正処理基準の内容及びその判断枠組みについて裁判例を網羅的に検証し、公正処理基準の意義を明らかにした研究である。

 第1章では、法人税法22条4項が導入された昭和42年当時と現在の状況を比較し、この間の企業会計の変容等を踏まえ、納税者の予測可能性の確保という問題意識の下で検討すべき問題点を明らかにしている。第2章では、公正処理基準に関する過去の研究を整理し、その趣旨や法的性質の独自性をアメリカ・ドイツとの比較において明らかにし、公正処理基準は企業会計に対する準拠性の確認規定であるとの意義を示している。第3章では、法人税法22条4項の適用範囲、公正妥当の解釈、会計慣行の意義、他の法令との関係について整理がなされている。第4章では、「公正処理基準の中には企業会計上は認められない法人税法独自の領域が存在する」という仮説を56事件(111判例)の分析を通じて検証している。それを踏まえた、第5章では、ある会計処理方法が公正処理基準に適合するかどうかの判断規準を体系化し、納税者の予測可能性を確保するための方策を提示している。

 著者は、本論文での検討を通じて、@法人税法22条4項の適用範囲は同項2項及び3項の「別段の定め」並びに明文の定めがない場合に限定されていること、Aその公正処理基準は「会計慣行」を意味し民法92条の事実たる慣習と同義と理解されていること、B公正処理基準に該当するためには「慣行性」と「公正妥当性」の2要件を充足する必要があり、「慣行性」については会計基準公表後3年以上の期間経過が条件となり、「公正妥当性」については法人税法独自の観点から判示される傾向にあること、C規範性の高い会計基準に準拠する会計処理は公正処理基準に該当するとの一定の推定が働くこと等を導き出している。これらの点は、従来の研究では、十分且つ体系的に解明されていない重要な論点であり、独自のモデルに基づいて裁判例を丹念に分析し、公正処理基準適合性の適合性の判断枠組みを導き出している点で、論理性、実証性、独創性のいずれについても当該研究の意義を認めることができ、納税者の予測可能性を確保するという観点からも高く評価できる論文である。


論 文(PDF)・・・・・・1.01MB


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