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瀬戸哲哉 稿
「租税法上の住所の意義に関する一考察
 ―武富士事件判例を中心として―」

(名古屋経済大学大学院 院生)

 本論文の内容は贈与税の租税回避の具体例として著名な武富士事件を題材にして、租税法上の住所の意義に関して考察を行ったものである。本論文は4章から成り、第1章では、租税法上の住所とは何かという問題意識のもとで、それが基本的には借用概念に該当し、その解釈は統一説に従い民法と同義に解すべきとしつつも、検討すべき問題として以下の3点があるとしている。

 それは、@統一説を前提にした借用概念論に拠ったとしても、租税法の趣旨から「別異に解すべき場合があること」、即ち、住所に係る「特別の解釈」の問題、A租税回避の意思に基づく居住意思を他の客観的事実と並べて事実認定することの可否、つまり、住所に係る「特別の事実認定」の問題、B立法政策をも含めた租税法上の住所のあり方の問題である。

 そして、筆者は以上の3点につき第2章から第4章において検討を加え、第2章では「特別の解釈」すなわち、借用概念の統一説における例外とは、明文の規定、又は明文から読み取れる立法趣旨により明らかな場合を指し、租税回避の意思のあることは例外には該当しないとし、第3章では、「特別の事実認定」に関連し、租税回避の意思を私法上の事実認定に混入させるべきでないと結論付けている。

 さらに、結論部分となる第4章では、武富士事件判決の残された課題として@住所複数説の可否と、A租税法上の生活の本拠についての明確な基準があいまいであることが挙げられるとし、前者については、住所複数説なるものが個人は住所を複数所有するという説、あるいは個別租税法ごとに住所が認定されるべきという立場であれば認められないとした。また、後者の基準については、客観的事実を基本とすべきとの立場から、まず住居の有無が最も重要であり、以下職業、親族、資産の所在の順に判断がなされるべきとしている。

 最後に租税法上の住所の在り方として、その立法的対応についても検討を加え、著者としては、納税義務者の規定において住所に代わる要件は見出しがたく、また、租税法上で住所の画一的な基準も設けることも適当ではないとし、租税回避行為に対しては,住所についての社会通念を逸脱しない範囲で個別的な立法により対処すべきと結論付けている。

 論文のテーマ自体は必ずしも新しいものとは言えないが、関連する判例及び先行研究を丹念に分析し、かつ想定できる論点について網羅的な検討を加えている。特に、このテーマに関しては多くの論者が様々な見解を開陳している中で、そうした見解に引きずられることなく、自己の立場を説得力をもって展開している姿勢は高く評価して良い。論理的にも実証的にもすぐれた論文と言うことができよう。


論 文(PDF)・・・・・・905KB


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