公益財団法人租税資料館


トップページ>>租税資料館賞>>第26回入賞作品>>「借地権課税に関する一考察」
戻る 次へ

寺澤翔太 稿
「借地権課税に関する一考察―権利金の2分の1課税を中心として―」

(東亜大学大学院 院生)

 本論文は、借地権設定時の権利金収入の所得分類について、土地の価額の2分の1超の場合には譲渡所得、2分の1以下の場合は不動産所得とする現行の権利金収入の2分の1基準に関して、借地権設定時と返還時とでは首尾一貫した取扱いとなっていない問題点の他に、借地権譲渡の問題や所得区分の操作性の問題があるとの問題意識から、当基準の見直しの方向性について、具体的に考察するものである。

 本論文は3章で構成され、第1章では、借地権が立法的手当てにより物権的性質を有するに至った沿革と、権利金の法的性質を考察する。筆者は、権利金の性質に関する学説を、@場所的利益、A賃料の一括前払い、B賃借権の譲渡等の承諾料又は賃借権設定の対価の3態様にまとめるが、個々の権利金の性質は多様で一義的に定義付けることは困難と結論付けている。第2章では、所得税法における権利金収入に対する課税制度を概説するとともに、2分の1基準のみで不動産所得と譲渡所得に分類することの3つの問題点を明らかにする。その上で、第3章において、先行研究での考察も踏まえつつ、現在の2分の1基準に代えて、サンヨウメリヤス土地賃借事件での最高裁判決に沿った、@契約期間の長期性、A譲渡性の承認、B所有権の一部譲渡の対価としての性質を要件として譲渡所得とし、これを届出を要件として認める制度を提案している。

 現行の金額基準のみで不動産所得と譲渡所得に分類する点については、多くの批判は見られるものの、その分類する基準をどのように見直すかという先行研究は十分ではないとの問題意識に基づいて考察を展開しており、主要文献を渉猟し、問題意識の明確化を図るという修士論文の作成における基本姿勢は、評価されるところである。

 本論文の提言内容は、過去の最高裁判決で示された判断枠組みをベースとするものであるが、届出制度を要件として追加することにより、実務的な解決を模索するという姿勢も見られ、独創性(ユニークさ)を示す工夫も認められる。

 現行の2分の1基準に基因する問題点についても丁寧に論述されており、また、提言内容をこれらの問題点に当てはめて、その妥当性を確認・検証するという点は、修士論文としての基本姿勢として評価されるところである。

 以上のような点に鑑み、奨励賞にふさわしい論文と判断される。


論 文(PDF)・・・・・・783KB


戻る 次へ




Copyright (c) SOZEISHIRYOKAN. All Rights Reserved.