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森田美貴 稿
「従業員等のストック・オプション報酬をめぐる
 国際的二重課税の調整について」

(立命館大学大学院 院生)

 本論文は、ストック・オプションを付与された従業員等が国家間を移動することによって生じる二重課税の問題をどのように調整するかを取り扱っている。論文の構成は次の通りである。

 第1章は、ストック・オプション制度の概要を記述している。第2章では、第1に、従業員等が付与時から権利行使時の間に国家間を移動した場合、権利行使益が両国で二重に課税されうること、第2に、従業員等が権利行使時から譲渡時の間に国家間を移動した場合、行使時には給与所得課税され、譲渡時には譲渡所得課税されることから国際的二重課税が生じうることが指摘されている。第3章では、OECDモデル租税条約並びに日米及び日英租税条約における上記国際的二重課税の調整の可否を論じている。第4章では、譲渡時に日本が居住地国として調整を行う場合は、国外転出時価税制度を参考に、権利行使時に相手国で課された税額を考慮して取得価額を権利行使時の時価に引き上げる国内法及び租税条約の規定を設けること、及び、譲渡時に日本が過去の居住地国である場合は、居住地国が取得価額を権利行使時の時価に引き上げる規定を租税条約に設けるべきことを提言している。

 本論文は、これまで十分に研究対象とされてこなかったストック・オプションを付与された従業員等が国家間を移動することによって生じる二重課税の調整問題を取り上げた時宜を得た研究として大いに評価される。特に、従業員等の国家間移動が付与時から権利行使時の間に行われた場合と権利行使時から譲渡時の間に行われた場合に分けて、それぞれの二重課税の発生メカニズムや調整の方法を検討している点は、問題を具体的に捉えた上で正確に分析していると認められる。筆者の着実な努力が伺える論文であり、複雑なテーマにつきよく理解していることが分かる。筆者の優れた問題把握力及び緻密な分析力を示す論文として租税資料館賞を授与するのにふさわしいと認められる。

 ただし、本論文にも欠点はないわけではない。たとえば、第3章のOECDモデル租税条約の分析は質量ともに不十分であり、その結論は明確ではない。また、各章において小括の項目が設けられていないため、見通しが悪くなっていることも指摘しておく必要があろう。


論 文(PDF)・・・・・・642KB


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