公益財団法人租税資料館

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読書雑感(2004/10/4)
拓殖大学教授 岸田 貞夫
租税資料館 評議員



 朝、新聞を見るとき、雑誌や本の広告欄にも注意している。パソコン、インターネット関係の本、雑誌、会計学などに関する本、また、生き方、知的生活に関する本、ハウツウものなどが多いようである。新しい男性雑誌、女性雑誌もある。

 最近は、生き方、知的生活というような表題のものも少なくない。それらの表題や短い内容案内などを読むと買いたくなるようなものも多い。

 読んだ後、買ってしまったことを後悔するようなものもたまにはある。それは、むしろ、あまりの期待過剰によるものであろう。

 いわゆる、ハウツウものも面白い。この種の本は、読者に如何に分かりやすくするか、読みやすくするが、ということに腐心している。そういう見地から、そのような目的をどの程度満たしているのか検討してみると面白い。どんな本でも潜在的な目的があり、それをどの程度表現しているかを基準とするのも、一つの見方であろう。どんな本でも、参考になる部分とそうでもない部分とがあって、後者の部分が大部分というのが一般的であろう。私なども、本の一部でも知りたいことが記載されているか、一部でも参考になる部分があるか、あればその本を購入する価値があると考えている(専門書になると、5,6行程度の部分のために安くない本を購入することもある。)。本の全体が、すべて参考になるというようなものは、あまり存在しないし、そこまで期待するまでもない。

 税に関する本についても同様である。税制度を説明しているものは将来必要となる場合が多いから、まず、購入しておこうとする場合が多い。購入後は、資料として保管しておくことが多い。いわゆる積読である。むしろ、購入後、読むことが比較的に多いのは、税の歴史に関する本や立法過程や立法秘話などが控えめに記載されている随筆集やそれに類するような覚書などである。残念ながら、この種の本は市販されることが多くないので、それらは図書館や資料室でしか見られない場合がある。この種の本は、市販されたときには、まず、購入しておき、その後に、何かと興味を持って読むことが多い。

 これらの本において、特に参考になるのは、立法過程などにおいて如何に現実の状況と妥協するのかが記載されている部分である。日本では、理念や信念等を貫き通すことが賞賛されている傾向がある。しかし、フランスの哲学者ベルグソンだったと思うが、「一つのことを貫き通すことは余りにも容易である。重要なのは、現実の状況と妥協することである」趣旨を述べていたと思うけれども、まさにその通りであろう。

 現実の経済取引を対象としている税法としては、現実の状況や意識を無視して立法することは、観念的であって、実効性の少ないものと言わざるを得ない。もっとも、一般的には、あえて意識改革を図るために立法することがあるが、税という国民に経済的負担を求める分野においては、そのまま妥当するとは思われないと思うからである。

 ところで、税に関する本といえば、その範囲は非常に広くなる。税はあらゆる経済取引社会を対象としているため、経済的取引について記載した本は間接的に税に関する本といえないこともない。いわゆる経済小説といわれるものも含まれることになる。私は、学生や若い人に経済小説を読むことをすすめている。経済小説には、経済取引の実態、隠れた趣旨、意図、あるいは盲点、問題点などを生々しく、面白く我々の前に提示してくれている。一番分かりやすい教科書である。

 少し脱線したが、若い時代には、何でも読んでおくと、後になって、参考になるのではないか、ということである。



 



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