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柴田 冬樹 稿
「仮想通貨・トークンに係る課税上の諸問題=A Study on Taxation Issues of the Crypto Currency ―所得課税の現状と今後の課税の在り方を中心に=Focusing on Income Taxation and Future Tasks―」

(千葉商科大学大学院 院生)

 本論文では、仮想通貨等の仕組みや、わが国及び諸外国の仮想通貨等に関する税制、私法上の(あるいは経済的な)性質を考察した上で、仮想通貨等に関連する所得を所得税法上のいかなる所得区分に区分するべきかという問題や、他税目において生じうる仮想通貨等の課税上の取り扱いなどを総合的に検討する。

 本論文では、ビットコインのみを論じるのではなく2000種ともされる仮想通貨等の取引を視野に入れつつ考察を進める。仮想通貨等の性質を論じるに際して、筆者は、仮想通貨の性質を捉えるには、その技術的バックボーンと私法的性質及び経済的性質(通貨性の有無)によって判断すべき旨を強調する。私法的性質の面から法的性質を考えるに当たって筆者は、どのアプローチによって財産権に結びつけて説明するのが適切かを検討すべきであるとする。筆者によれば、私法上の性質を考慮する際に考えられるアプローチには、いずれも困難さや限界があるが、「コンセンサス(民法上の合意よりも消極的)」を念頭に置いて理解することは「合理的かつ現実的である」として、所得の帰属と課税時期の問題に関しては、「コンセンサス・アプローチ」が「一応の解決策を与えてくれる」との評価を下している。経済的性質の観点からは、高度な流通性に基づく通貨性と信用の裏付け、価値貯蔵や価値交換手段としての機能に着目して考察し、「通貨性の有無」により、その性質が異なることを確認したうえで、それぞれの仮想通貨等に通貨性の有無の基準を用いて税法上の取扱いも区別されるべきことを確認している。所得区分については、仮想通貨等の資産該当性を前提として、具体的な取引の態様に応じて区分し、所得税法における具体的なあるべき課税関係を論じる。筆者は、仮想通貨等に関わる多様な所得稼得形態を踏まえると、所得の源泉や性質に応じた区分が必要であるとして、原則雑所得とする国税庁見解に疑問を投じる。英国同様、わが国も定義にかかわらず所得の性質に応じて実態に即した課税を積極的に検討するよう求める筆者の考えがここでも現れている。

 イノベーション(技術革新)による取引の複雑化・多様化に伴い、さらに新たな仮想通貨等が登場しつつある。これらの仮想通貨等取引の市場規模は、現在は相対的には小さいとはいえ、その取引の性質を法的に確定し、租税法律主義と租税公平主義の視点から、その課税の在り方を検討することが不可欠であることを、本論文は指摘している。仮想通貨等の取引は多岐多様であり、複雑であるが、その課税関係を検討するうえで、前提となる基準は「通貨性の有無」であるとの立場から、多様な仮想通貨等の性質と取引の性格を詳細に検討している。仮想通貨等の性質と取引の実態に対応して課税関係を構築すべきであるとする筆者の見解は説得的である。もっとも、複雑で、筆者によれば現段階でも2000種に及ぶ仮想通貨等の性質や取引をめぐる課税関係を、網羅的に論じるのは不可能に近い。その不可能に近い作業を最大公約数で示したのが本研究ではなかろうか。本研究は、一貫した意識の下で、仮想通貨等取引の総合的な検討を試みている。単なる仮想通貨等の解説にとどまらず、その性質論にまで踏み込んで考察をしている点や、カレントなテーマに果敢に挑戦した点でも十分評価しうる。


論 文(PDF)・・・・・・1.70MB


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