公益財団法人 租税資料館
代表理事
 増田 英敏

 2023年6月より公益財団法人租税資料館代表理事(理事長)の職を拝命いたしました。

 租税資料館は、TKC全国会初代会長、故飯塚毅博士により平成3年5月に設立された、わが国最大の租税に関する専門図書館であり、学術研究支援機関であります。飯塚博士が収集された税法・会計関係の洋書・和書をはじめ、現在では蔵書数は十数万冊に上ります。

 飯塚博士は、当財団設立の趣旨を「(1)飯塚毅の所有する文献に加えて、更に租税に関する資料、文献を収集、管理してこれを一般に公開すること、(2)本格的かつ永続的に租税法理論及び税務会計理論、特に外国税法との比較研究やコンピュータ会計と租税法の関係について研究の助成を行うこと、そして、(3)同時にその人材を育成することにより、わが国の税務の発展に寄与することであります」と述べておられます。

 当財団設立の趣旨・目的を実現するために主として以下の3つの事業を展開しております。

 第1の事業として、租税に関する資料・文献等を収集・管理・公開し、歴史的価値のある資料・文献等を中心に蔵書の充実を図るとともに、利用者の皆様には快適な調査研究の場として閲覧室・研究室(ゼミ室)を提供しております。

 第2の事業として、租税法学・会計学に関する優秀な著作・論文に対して租税資料館賞を授与することにより研究成果の顕彰を行っております。とくに、若手研究者の育成を目的として、大学院生の優秀な修士論文に対する顕彰に力を入れており、租税資料館賞受賞論文は租税法学等の研究で引用されるなど、その学術的評価も年々増してきております。

 第3の事業として、租税法研究・会計研究等に関する研究者の育成を目的に、研究書の出版助成、研究者の長期海外留学助成や海外調査研究助成事業を行っております。これらの助成事業は、学界の発展に寄与する先駆的な研究成果の結実に寄与しております。

 私事になりますが、思い起こせば、租税資料館の上記の事業により私自身も租税法研究者として多大な支援を受けてきました。1992年に第1回租税資料館賞を受賞し、奇しくも授賞式で飯塚博士との会食の機会に恵まれました。会食の席で飯塚博士からは、文献収集の重要性等、研究者のあり方についてご教示いただき、激励されたことを昨日のことのように鮮烈に思い出されます。

 その後も留学助成や出版助成の栄誉にも浴すことができました。私の研究者人生の節目節目に租税資料館の支援があったことに、ただただ感謝するばかりです。この感謝を胸に、微力ではありますが、租税資料館のさらなる充実・発展のために精進してまいります。

 最後になりますが、AIの台頭等により学術研究の世界も大きな転換期を迎えております。租税資料館に求められる時代の要請を探索し、フレキシブルに対応していくという姿勢を堅持し、飯塚博士の崇高な志を実現できるよう、当財団の役職員の協力を得ながら発展に尽くしていく所存です。

 引き続き皆様のご指導、ご支援のほど、宜しくお願い申し上げます。

2023年6月

略歴

増田英敏(ますだ ひでとし)
昭和31年 茨城県に生まれる

現職・略歴等

専修大学法学部教授、前専修大学大学院法学研究科長、法学博士(慶應義塾大学)、増田法律事務所所長(弁護士)、水戸地方裁判所民事調停委員、租税法務学会理事長、租税法学会理事、日本税法学会常務理事、元税理士試験委員、日本学術会議研究連絡委員18期・19期、ワシントン州立大学ロースクール客員研究員(1993年)、ハワイ州立大学経営大学院客員研究員(2000年)

主要著作

  • 『納税者の権利保護の法理』(成文堂、平成9年)
  • 『租税憲法学第3版』(成文堂、平成18年)
  • 『リーガルマインド租税法第5版』(成文堂、令和元年)
  • 『紛争予防税法学』(TKC出版、平成27年)
  • 『租税法の解釈と適用』(中央経済社、平成29年)編著
  • 『公法の理論と体系思考』(信山社、平成29年)編著
  • 『租税憲法学の展開』(成文堂、平成30年)編著
  • 『租税行政と納税者の救済』(中央経済社、平成9年)編著
  • 『租税実体法の解釈と適用・2』(中央経済社、平成12年)編著
  • 『はじめての租税法』(成文堂、平成23年)共編著
  • 『基本原理から読み解く租税法入門』(成文堂、平成26年)編著