矢内 一好 著 「国際課税と租税条約」
経済活動の国際化に伴なって国際課税の問題は極めて重要なものとなり、特に最近は米国の移転価格税制に関する規則の改正やその執行の強化などの問題で我が国企業の関心も極めて高いものとなっている。そのため国際課税に関する著作は、昨今は比較的多くみられるようになった。しかしながらその多くは現状解説的なものであり、理論的な深みは今一つというものが多い。これは著者も「はしがき」において述ているように、一つには、国際課税という分野が非常に実務的色彩の強いもので、各国の税制が目まぐるしく変動するために、租税条約を含めて、国際的課税問題が常に前面に出て、企業等が当面する租税問題を解決するという方法あるいは外国税制の解釈等に関心が集まって居るためであろう。本書は、そのように「複雑化した課税問題を扱うについては、より一層の基礎的部分の研究が必要」という著者の問題意識から、モデル租税条約を中心として租税条約の歴史を検討している。また現在の租税条約が直面している問題である条約漁り(トリーティショッピング)と米国の国内後法優先主義の問題を論じ、今後の租税条約のあり方を論じている。 |