芝池 義一・田中 治・岡村 忠生編 「租税行政と権利保護」
本書は、清永敬次教授の還暦を祝賀して出版されたもので、税法学、憲法学、行政法学の領域に属している研究者による12の論考が収められている。 本書の第一の特徴は、税法学、憲法学、行政法学の共同研究の書物であり、相互に対話を試みているということである。総論的な論考として、芝池義一「税法と行政法」は、税法理論における課税処分=確認行為論等について、行政法の観点から重要な問題提起を行っている。田中治「租税行政の特質論と租税救済」は、租税行政の特質論が果たしている役割を検討し、権利論からする制約が必要だと述べる。佐藤幸治「職業選択の自由規制と司法審査」は、酒類販売免許制度に関する最高裁判決を素材に、職業選択の自由に対する規制のあり方を論じる。 本書の第二の特徴は、租税行政手続および租税争訟手続を共通の検討対象としていることである。納税者の権利保護の観点からみて、納税義務の確定と履行の過程をどのように捉えるのか(税務調査のあり方、課税処分の理由附記の要否、源泉徴収の法的性格など)、租税争訟手続をどのように整備すべきか(審理の対象、主張責任・証明責任、訴訟類型論など)等が主な論点である。 本書は、租税行政の適法性と合理性を確保し、納税者の権利保護を図る観点に立って、納税義務の確定と履行の過程をどのように捉えるか、租税争訟手続をどのように整備すべきかなどについて、法制度・学説・裁判例を検討し、解釈論上、立法論上の新たな理論の提示を試みている。その特徴は、租税行政手続および租税争訟手続を共通の検討対象としたこと、および租税法学者のみならず、憲法学者、行政法学者が共同研究に加わっていることである。後者との関連において、租税行政の特殊性を主張することにより、納税者の権利や利益はどのような影響を受けるのか、行政法学が提供する行政法理論は租税行政の領域でどのように、どの程度まで妥当すべきかなどについて、本書は意欲的に問題を提起している。 |