中田 謙司 著 「税金を払おう」

中田 謙司 著
「税金を払おう」

(日本経済新聞社 平成11年8月刊)

 著者は、納税者の支払った税金がどのように使われているのか、多くの例を挙げながら実態を明らかにしている。第一章「なぜ正直者ほど馬鹿をみる」や、第二章「正しい税金の払い方」では、いずれも、わが国の税制が外国と比較してやや遅れていることを述べ、第三章「御神輿はみんなで担ごう」、第四章「お金の使われ方を自分で選ぶ」では、税制の平等を貫くためには納税者番号制度の確立が必要であり、納税者において自ら税金の一部を寄附する寄付金控除の拡大によって税金の使途に納税者の意思を反映させることを提言している。第五章「人生は一巻の終わりか」では、日本の相続税が高すぎることを、第六章「豊かな暮らしをしてみたい」では我が国の住宅政策の貧困が税制にも在ると論じているなど、第十章「夢を追える税制へ」まで具体的に例示しながら、その税制について実務経験に基づく、豊富なかつ、適切な知識を駆使して、現行の日本の税制全般における問題点を具体的に、外国税制との比較などをしながら、わかり易く、かつ、納得のいくように説明している。

 著者は、総ての所得を総合課税とし、納税者番号制の制度化、源泉徴収費用の企業への還付、国際租税の簡素化、非課税団体への寄付金控除の拡大と政府の補助金の減少を強調している。そして平成不況脱出の方策として、税制において労働力の流動化を促進させ、新規参入・技術革新を促進させるための税制の必要を説き、平成不況の心理的不安である高齢化の問題につき、年金と税金と社会保障の各役割を明確にし、高齢者雇用を促進させる税制を各提言している。

 本書は、一般の人も興味深く読めるように「税の集め方」を中心に、国際比較や身近なトピックを取り上げながら、日本の税制の問題点と改革の方向性を明らかにしたとする著者の意図は、ほぼ目的を達成しているようにおもわれる。特に、税金が国民性や経済・社会・文化と深く結びついている点や、現実の日本の税制につき、別の視点からの選択肢があると指摘する点は、税制がいかに在るべきかを勉強しようとする者にとっては良き資料となる。