出口 貴子 稿「法人税法の所得概念に関する一考察」
本論文は、無償譲渡に係る収益認識問題の解明を通じて、法人税法上の所得概念の解明を試みたものである。 論を展開するに当たって、法人税法上の所得概念の沿革について、明治35年の所得税法の規定に始まり、昭和40年の法人税法の改正に至るまでを跡づけ、続いて、判例並びに各種学説を渉猟して、それを検討の対象として取り上げている。かかる考察を通じて、そこにみられる所得概念の変遷の過程と諸学説の特徴を浮き彫りにしている。 更に、昭和40年の改正税法並びにキャピタルゲイン課税に係る判例や学説における所得概念を問題とする。 著者は本論文を通じて、無償取引に対する課税問題をキャピタルゲインの有無を判断基準として、キャピタルゲインの生じている場合には、そこに実体ある利益が存在するものとして課税の合法性を認める立場をとっている。 内容的な論理展開でいま一歩掘り下げて欲しい面も存在するが、修士課程在籍の2カ年間における研究業績としては、かなりの水準に達するものとして評価できる。広範囲に亘る文献渉猟を行い、それぞれの判例・学説等の的確な分析を通じて整理された上で論を展開すると共に、自らの結論を著者なりに明確に主張している。論理展開の文章術にも優れており、租税資料館・奨励賞の受賞に値するものと評価された。 論 文(PDF)・・・・・・2.22MB |