林 亜紀 稿 「グローバル経済下での日本の消費税制のあり方」

林 亜紀 稿
「グローバル経済下での日本の消費税制のあり方」

 ―電子商取引の取扱いを中心として―
(関西大学大学院 院生)

 本論文は、国際間の電子商取引によるBtoC(外国事業者と国内消費者)との取引を中心とした消費税の課税漏れに問題について検討を行い、EUやOECDなどの問題に対する取り組みを提示し改善策を提案しようと試みたものである。

 本論文の構成は以下のとおり4章から構成されている。
 第1章 グローバル経済下の電子商取引に起因する消費課税の問題
 第2章 国際間の電子商取引に係る消費課税の先行事例
 第3章 我が国の電子商取引の発達と消費課税に及ぼす影響
 第4章 今後のあるべき姿

 現実に進化発展する経済取引を課税対象とする場合、経済取引の変容が課税関係にいかなる歪みをもたらし、その是正にいかなる取り組みが必要か、という問題意識の下に本論文は展開されている。

 電子商取引の普及はとりわけ消費課税に大きな影響を及ぼすことは、消費税の課税構造の特性に着目すれば容易に予想できる。その予想を統計数値を用いて実証的に説明しているところに本稿の価値を見出すことができよう。

 とりわけ本稿の3章は、『我が国の電子商取引の発達と消費課税に及ぼす影響』として、電子商取引が引き起こす税収に対するインパクトの先行研究を概観したうえで、国際間の電子商取引が引き起こす消費税収損失額を推計し、消費税収損失額の推計結果及び考察を加えている。

 推計結果に至る推計方法の合理性も担保されており、統計数値を組み合わせ推計数値を導いており、一人の研究としては極めて地道に作業が進められている点を高く評価したい。さらに推計結果に対する考察も妥当な内容といえる。

 この数値に基づき今後の電子商取引と消費課税の在り方を提言しているが、OECD発行の最新の統計資料の渉猟などの補完が求められる。など、問題解決の提案は興味深いが、記述が簡略化されており、提案自体の説得力は不足している感はあるが、問題意識がクリアで修士論文としては高く評価できる。

論 文(PDF)・・・・・・781KB