武村 紀子 稿 「役員給与課税の諸問題」

武村 紀子 稿
「役員給与課税の諸問題」

(修士論文 早稲田大学大学院院生)

 本論文は、平成18年度税制改正による役員給与課税制度の問題点を詳細に検討し、その解決策を提示したものである。

 まず、第1章では、平成18年度改正前の役員給与課税の問題点として、不相当に高額な部分の判定や、定時定額支給の給与以外の報酬が役員賞与と認定されて全額損金不算入となることなどが、問題点として指摘されている。

 第2章では、平成18年度法改正の内容が紹介され、その特徴として、従来の役員賞与に係る課税問題が解消したこと、業績連動型報酬制度の一部が容認されたこと、及び、特殊支配同族会社に対する新たな課税問題が生じたことなどが挙げられている。

 第3章では、平成18年度法改正の問題点が詳細に検討されている。例えば、定期同額給与については、損金の額に算入できる範囲が限定的であること、事前確定届出給与については、届出額と異なる金額を支給した場合にその全額が損金不算入になること、利益連動給与については、適用法人がごく僅かの一部法人に限定されていること、特殊支配同族会社の業務主宰役員に対する給与については、当該給与に係る給与所得控除額相当分を損金不算入としたことにより、所得税と法人税の関係を不明確にしたことなどが、主な問題点として指摘されている。

 第4章では、これまで示された問題点について、さらに検討を加え、それぞれの解決策が提示されている。例えば、実情にあった期間の設定、基準に合わない部分だけの損金不算入など、納得のいく提案が示されている。

 最後に、これらの問題点もすべて、法人が費用として支給(損金経理)した役員給与全額の損金算入を認めれば解消することであり、役員給与の損金算入を認め、役員にはさらなる経営努力を期待した方が国民経済全体にとってもプラスになるはずであるとまとめられている。

 以上のように、本論文は、平成18年度改正による役員給与課税について丹念に検討し、多くの問題点を指摘し、具体的な提言も行っており、租税資料館奨励賞にふさわしい論文と評価することができよう。

論 文(PDF)・・・・・・2.63MB