笹川 篤史 稿「住居の所有関係別にみた消費税負担に関する考察」
本論文は、消費税の増税を控えてその逆進性が問題とされているところ、総務省の「家計調査」を基にして、収入階級別に対応した持家と借家の各世帯別に消費税負担割合を比較し、それぞれの逆進性の程度を実証しようとするものである。その論文の主要項目は、次のとおりである。 1.家計調査年報による収入階級別にみた家賃地代支払額 以上の検証の結果、次の結論を導いている。 [1] 借家世帯の中における比較の方が逆進性の程度が少なくなっていることが明らかになった。 以上のように、本論文は、消費税が逆進性をもたらすという問題提起に対し、その実態を「家計調査」を基にして実証するものであるが、各世帯の収入階級別とそれに対応した持家と借家によって消費税の負担比を比較し、その逆進性を実証したところに特色がある。これにより、家賃が非課税とされているため、持家という資産を持たない世帯の消費税負担額が軽減されており、一定の逆進性の緩和につながっていることも確認された。 このような検証においては、数多くの数量的分析を行い、具体的な数値によってそれぞれの逆進性の実態を明らかにしているので、その実証性について高く評価できる。 しかしながら、著者も認めているように、消費税の課税において家賃が非課税で持家取得が課税であれば、借家世帯の消費税負担比が低くなるのは当然のことでもある。よって、そのことのみを実証するのみでは、平凡な結論を導いたものにすぎないとも言える。よって、この実証結果を基にして、今後、消費税の課税のあり方について、一層の研究が望まれる。 論 文(PDF)・・・・・・336KB |