小野村敬子 稿「法人税法69条における外国法人税の範囲の検討   ―最高裁判決を踏まえた法解釈枠組みの明確化―」

小野村敬子 稿「法人税法69条における外国法人税の範囲の検討   ―最高裁判決を踏まえた法解釈枠組みの明確化―」

(兵庫県立大学大学院院生)

 本論文の目的は、国際的二重課税排除の観点から、日本の国際的二重課税排除制度である外国税額控除制度において、その控除対象とされる「外国法人税」の範囲について、現行制度の解釈を踏まえて、その意味内容を明らかにすることにある。外国税額控除制度は、日本の内国法人が外国で納付した租税を、二重課税が生じる場合に、一定の範囲内で日本において納付する税額から控除できる仕組みであるが、外国で納付した租税のすべてを控除できるわけではなく、その控除対象となる外国税は、日本の租税法上の「外国法人税」に該当する必要がある。「外国法人税」は、法人税69条および施行令141条でその範囲が定義されているが、その内容は抽象的で外国で納付した租税の「外国法人税」に該当するかどうかについての判断を行使するためには解釈を要する。

 第1章では、国際取引の増加と、それに伴う国際課税の問題を明らかにしている。第2章では、外国税額控除制度を概観し、その中に規定される「外国法人税」の範囲につき、最高裁判決を通して現行制度における解釈の枠組みを確認している。第3章では、外国の法概念を日本に適用する場合の判断基準および判断枠組みについて、外国の事業体が日本の租税法上の「法人」に該当するか否かが争われた判例を通して検討を行っている。第4章では、外国の法令に基づいて課された税を対象とする「外国法人税」の該当性を考えるに当たり、第3章で検討した外国の法概念を日本に適用する際の判断基準と枠組みを用いて、第2章で取り上げた最高裁判決の解釈を通じて「外国法人税」の要素の解釈の枠組みを検討している。第5章では、現行制度における「外国法人税」の範囲の解釈において未解決の問題を明らかにし、その解釈の明確化を提言している。

 以上、本論文の概要から理解できるように、国際的二重課税は、納税者の税負担を過度にし、国際的経済活動を抑制させてしまうため、適切に排除されなければならないが、その排除制度として国内法に定められている外国税額控除制度のうち、控除対象とされる「外国法人税」が抽象的であることは、法的安定性・予約可能性の観点から改善されるべき点である。本論文は、そのような問題意識に基づき、「外国法人税」の範囲が争われた最高裁判決における「外国法人税」の範囲の解釈を検討した上で、現行制度における「外国法人税」の範囲を画定するための判断枠組みを提案している点について、論理性や独創性という観点から高く評価される研究である。

論 文(PDF)・・・・・・1.56MB