内山 旭 稿「法人税法における利用者(ユーザー)側の自社利用ソフトウェアの取扱い―クラウド・アジャイル型開発・コンテンツを題材として―」

内山 旭 稿 (東京国際大学大学院 院生)
「法人税法における利用者(ユーザー)側の自社利用ソフトウェアの取扱い―クラウド・アジャイル型開発・コンテンツを題材として―」

 本論文の目的は、新たなソフトウェア技術の進展を踏まえ、ソフトウェアは税法において「どのように定義され」「どう取り扱われ」「その取扱いが今後どのような方向に向かうのか(向かうべきか)」を検討することにある。

 本論文は5章から構成される。第1章では、ソフトウェアおよびコンテンツについて、企業会計、法人税法、会社法、著作権法、特許法における定義を確認している。第2章では、研究開発費等会計基準における関連規定を確認するとともに、ソフトウェア制作費等研究資料(日本公認会計士協会)、新リース会計基準、IAS第38号「無形資産」における、ソフトウェアおよびクラウド・コンピューティングに関する論点を整理している。第3章では、法人税法におけるソフトウェアの沿革と現状の取扱いを確認し、企業会計と法人税法における「自社利用ソフトウェアの取扱い」の相違を整理している。第4章では、平成12(2000)年度税制改正前の裁判例について、ソフトウェアの概念・範囲の捉え方を考察している。第5章では、3つの境界、具体的には、①「クラウドサービスと従来のオンプレミス型のソフトウェア」の境界、②「アジャイル型開発と従来のウォーターフォール型開発」の開発手法の境界、③「ソフトウェアとコンテンツ」の境界について、それらの論点を考察し、利用者(ユーザー)側における「自社利用ソフトウェアの取扱い」のあり方を論述している。

 以上の議論を踏まえ、本論文は、「立法時に想定しなかった新たな事象や技術革新が生じた場合、『実質優先主義』により、法人税法として対応すべきである」と結論づけている。

 ソフトウェアの取扱いは、平成12(2000)年度税制改正で減価償却資産として規定されて以来、既に四半世紀が経過していることから、本論文がソフトウェアを検討課題としたことは、時宜に適ったものであるといってよい。しかも、「クラウド」「アジャイル型開発」「コンテンツ」といったデジタル社会の最新テーマが詳細に論じられており、従来の先行研究で見られなかった考察として評価できる。また、論旨は明快であり、論述も具体的で、かつ、分かり易いことから、その学術的価値は高いものと評価できる。

論 文(PDF)