小森 将之 稿「ビットコイン型仮想通貨のマイニングに係る税法上の諸問題について ―所得税法・消費税法の観点から―」

小森 将之 稿「ビットコイン型仮想通貨のマイニングに係る税法上の諸問題について ―所得税法・消費税法の観点から―」

(早稲田大学大学院 院生)

 本論文は、ビットコイン型仮想通貨のマイニング(通貨の新規発行及び送金取引の承認行為)に焦点を当て、所得税法および消費税法の観点から検討している。所得税法の観点からの考察は、新たに発行した仮想通貨や送金手数料の獲得が所得を構成し得るのか、仮に構成するとしたならば、どのような所得分類に属し、課税上どのように評価するべきかをその内容とする。また、消費税法の観点からの考察では、「資産の譲渡等」(あるいは「役務の提供」)の該当性や、執行可能性の問題などを取り上げる。マイニングは他者の送金取引を承認することによって手数料を獲得できることから、マイニングを「役務の提供」と解し得るのかというような問題に、筆者はとりわけ関心を寄せている。

 筆者は、新たに発行された仮想通貨の獲得は「権利確定」を観念できない収入であるから、権利確定基準が働かない蓋然性が高いとする。一方、管理支配基準の適用要件は裁判上明確でなく、その適用範囲が限定的であることから、結局、現状においては収入と認識することが困難であるとして、従来の管理支配準を拡大し、同基準が適用される第3類型に位置づけられるべきと主張する。また、所得分類については、裁判例に示された傾向及びマイニングという行為の性質に鑑みれば、原則として雑所得に該当し、例外的に事業所得に該当するとの結論を導出している。

 消費税の課税問題についても、マイナーが獲得する送金手数料は消費税法における対価にあたり、また、マイニングは「電気通信利用役務の提供」に相当するとしたうえで、いわゆるB to C取引の執行性を十分に確保する方策として立法的解決を図るべきことを提唱している。

 「仮想通貨」をめぐる問題は、現在、課税上もその対応策が急がれている。本論文で採り上げた問題は、まさにタイムリーであり、かつ研究の必要性も高い重要な課題の一つである。ただし、この種の問題は、税法以外の専門知識も必要になる難解なテーマの一つであるため、その処理については、十分な知識が求められることになる。本論文は先行研究における議論からさらに一歩進んだところで、問題の考察・検討を行っており、そのような要求に十分応えていると思われる。さらに、筆者は、常に明確な問題意識をもちながら、説得力のある議論を展開していることも印象的である。

 ただ、惜しむらくは、研究の対象をマイニングに限定しているために、検討の射程が若干狭くなってしまっていることは否定できない。とはいえ、本論文が現代を見据えた意欲的な研究であることは明らかであり、本論文が、今後のこの種の分野における研究の基礎を提供しているという意味においても、十分評価に値する作品であるという事実には変わりはない。

論 文(PDF)・・・・・・0.99MB