石橋 もと子 稿「第二次納税義務の期間制限に関する一考察」

石橋 もと子 稿
「第二次納税義務の期間制限に関する一考察」

(文京学院大学大学院 院生)

 本論文では国税徴収法の第二次納税義務に対する納税者の権利救済に関し、特に同制度の納付告知の期間制限のあるべき姿につき考察を行っている。

 本論文は4章から構成されている。第1章では現在の第二次納税義務制度の概要を紹介し、同制度の納付告知が賦課権と徴収権の二つの性格を併せて持つこと、および、現状ではいずれについても期間制限(賦課権の除斥期間及び徴収権の独立した消滅時効)が認められておらず、第二次納税義務者の法的安定性を損なうことがあることを指摘する。筆者としては、現行の第二次納税義務では「付従性」及び「補充性」を前提にしつつも「独立性」が認められるケースもあることがその原因であるとし、性格の異なる第二次納税義務を一括して同様の税法上の立場に置くことには問題があるとする。第2章では、第二次納税義務の法的性質を「徴収手続上の一処分」とした最高裁判決を根拠として、第二次納税義務の告知処分には除斥期間がないとされているが、筆者としては第二次納税義務の態様は様々であり、独立性の強いものについては告知処分の法的性質を課税処分と解釈することも可能であると指摘する。これらの検討を経て筆者は、国税徴収法の改正で第二次納税義務の賦課権に除斥期間を設けることや、第二次納税義務独自の消滅時効を認める必要性についても、考慮すべきであるとする。第3章では第二次納税義務の各類型について、独立性が強いか、一体性・親近性が強いかにより分類した場合に、前者であれば実体法としての第二次納税義務の類型に該当するので、国税徴収法39条以外の、同法34条2項、38条、41条2項等の第二次納税義務についても期間制限を設ける必要性が出てくるとする。結論に当たる第4章は、以上の検討結果をふまえ国税徴収法の改正が提必要であるとして、第二次納税義務の通則的規定である同法32条に第3章で期間制限が必要となるとされた条項に限定して、5年の賦課権の除斥期間(同条6項)と主たる納税義務からは独立した徴収権の消滅時効(同条7項)を創設するよう提言している。

 第二次納税義務者の権利救済に関しては、最高裁平成18年1月19日判決の射程(第二次納税義務者が主たる納税義務者になされた課税処分を訴訟で争うことができるかという争点)を検討する例が多い。本論文のように、第二次納税義務の期間制限をテーマにして研究したケースは少なく、テーマ選択における独自性を認めることができる。とくに、筆者が第二次納税義務を11の類型に分類した上で、第二次納税義務を実体法の側面と手続法の側面に分類し、それぞれに期間制限の提言を行っている点は、従来の期間制限における問題へのアプローチの仕方とは一線を画する、独創的な発想を感じさせる。問題の所在から、具体的解決策への提言に至るまで、筆者の議論は論理的に一貫しており、それが本論文を大変読みやすいものとしている。結果的に租税資料館賞の受賞に十分値する好作品となっている。

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