鳥越 妙子 稿「法人税の更正の請求に関する考察―企業会計と法人税法22条と国税通則法23条の関係をもとに―」

鳥越 妙子 稿 (明治大学専門職大学院 院生)
「法人税の更正の請求に関する考察―企業会計と法人税法22条と国税通則法23条の関係をもとに―」

 本論文では国税通則法第23条と法人税法第22条を確認し、更正の請求が実体的要件と手続的要件の二段構えになっていることを確認した上で、金融商品取引法、会社法、法人税法を概観し、各法律の遡及修正についての考え方と過年度所得金額に係る修正について争われた4つの裁判例を確認している。その裁判例のなかで、「TFK事件」、「クラヴィス事件」すなわち消費者金融に関わる事件の「所得なきところの課税」については、税法では理屈に合っているとしても、心情的にはどうかというところを解消して、法文上手当てできないか課題にしている。

 まず、国税通則法第23条第1項での当初申告が誤っていた場合については、前期損益修正損益の計上や過年度に遡及しての修正処理は意図的な租税回避がなされる余地も大きいことから、ここで公正処理基準を除外して手続的要件でもって、更正の請求が認められるか否かを判定すべきとしている。次に国税通則法第23条第1項での後発的事由が生じたときの更正の請求については、管理支配基準で、当初に違法所得であっても益金に計上されていたものが、判決等でもって、その益金としての計上根拠が喪失された場合には、更正の請求か法人税法第22条第3項3号による前期損益修正損の損金算入により是正を図るべきとしている。この選択は法人の任意としている。

 筆者は、法人税法は修正方法が公正妥当か否かを判断するのではなく、いつの事業年度の益金、損金に算入すべきかを事実発生の性質によって判断すべきという持論を展開している。また、課税上弊害がなければ、前期損益修正損益による処理も容認できるとしても、計上根拠が喪失しているのであれば、過年度に遡っての修正も是認できるという考え方も容認できる。

 文面において難解な部分が見られるが、筆者の言わんとしているところは明快に示されており、結論も十分かみ砕いて説得力のあるものとなっていることから、租税資料館奨励賞を授与するに値する論文といえよう。

論 文(PDF)