インターネット時代の情報収集 日本大学教授 租税資料館理事 田中 建二

 仕事上の必要から何か資料を探したり、レポートや論文を作成するのに必要な文献を見つけようとする場合、以前ならば、図書館に行って調べたり、本屋さんで探したりしたことでしょう。ところが、インターネットが普及した現在では、インターネットでキーワードを入れて検索すれば、たちどころに多くの情報が得られ、簡単に調べることが出来るようになりました。

最近の学生や院生が提出するレポートや論文を見ても、インターネット経由で得られたデータや資料を切り貼りしたものがかなり増えてきました。変化の激しい現代では、知識もこれまで以上に速いスピードで陳腐化します。最新の情報を得るためには、インターネットは不可欠な手段といえるでしょう。

たしかに、インターネットの発達によって、これまでなかなか手に入れることが出来なかったような情報を簡単にしかも瞬時に入手することが出来るようになり、とても便利になりました。しかし、インターネットを通じて得られる情報があまりにも多すぎて、かえって取捨選択に困ってしまう場合もあります。

いろいろな問題を考えるさいに、関連する情報が沢山あることはよいことなのですが、あまりにも多すぎるとかえって情報過多に陥り、それらの情報を使いこなせなくなります。インターネットを有効に活用するためには、玉石混淆の情報の中から信頼できる適切な情報を選び出す力が欠かせません。インターネットを過信せずに、情報の質を自分の眼で見極められる能力が重要です。そうした能力を高めるよう日頃から努力することがきわめて大事なことといえましょう。

また、あまりにも容易に資料などが入手できると、その有り難みを実感することが出来ません。せっかく入手した文献や資料を大切に扱うことを忘れがちです。ファイルに保存したり印刷したりしただけで、もう読んだ気になってしまうのは、皆さんもよく経験することでしょう。読んでもいないコピーが山のように積まれて、結局は、読まれずにそのまま捨てられてしまうというのは、もったいないことです。

このように、今では、自宅や職場に居ながらにして、世界中のさまざまな情報がインターネットを通じて得られるようになりました。そこで、もう図書館や資料室に行く必要はなくなったと極言する人もいます。しかし、本当にそうなのでしょうか。

図書館の書庫などでお目当ての本を探しているときに、たまたま近くにあった別の本をふと開いてみたら、意外なヒントが得られた、というような経験をしたことはありませんか。本を探す楽しみは、そうした思いがけない本との出会いにあります。インターネットに頼るのもよいのですが、たまには図書館などに出かけて実物にあたるのも思わぬ発見につながるかもしれません。あなたも、租税資料館で本を探す楽しみを存分に味わってみませんか。